2011/02/16

建築は生きている - 吉村順三建築のいま


2/6まで名古屋の橦木館で開催されていた企画展の特別冊子を入手した。
棲すみかの別冊とのことである。
吉村山荘「小さな森の家」、愛知県立芸術大学、八ヶ岳高原音楽堂、竹早山荘、南台の家(吉村自邸)の最新の写真が収録されていて興味深い。主に東海地方の書店で販売しているものだが、東京でもジュンク堂書店新宿店などで取り扱っているので吉村ファンは要チェックである。


実は昨年南台の家(吉村自邸)を見学する機会に恵まれた。
学生時代からずっとずっと憧れていた歴史的な名作住宅であるのはいうまでもない。作品集や図面集では繰り返し見飽きるほど見ているが、実物での空間体験はやはり想像を超えるものがあった。そのときの感想をちょっと書いておこうと思う。

写真の印象から、天井の低い、押さえの効いた空間をイメージしていたが、実際には思いのほか低い印象はなく、かといって高くもない。むしろ「丸い」と表現していいかどうか、やわらかい「ずんぐり」とした印象を感じた。それで思い出したのが、軽井沢の吉村山荘。あの家も実際の空間は「ずんぐり」としていた。やさしく、暖かく、やわらかい空気は共通したものがあると思う。この本の写真もそうだが、建築写真は広角で撮るとパースがついて、どうしても実物よりもきつく写ってしまうのかな。


そしてこの家は「真壁」の家であることに改めて気付かされた。しかし、なぜかスッキリしている。よく見ると柱の本数が少ないではないか。通常は構造的に一間ピッチに柱を入れないと壁としてはしっかりしないと思うのだが......と思って、帰って図面集で確認したところ、隠してちゃんと小さい柱が入っていた。見せたくなかったということか。

あとは池が大きかった。暖炉とソファとローテーブルも想像より一回り大きかった。それがみょうに空間全体に安心感を与えているような気がした。いろんな建築を見てきたが、名作といわれるものは想像より一回り小さいことが多かった。想像より大きくてそれが良かったという体験は初めてかもしれない。

以上が主な感想である。ちょっと感覚的なものになってしまった。空気式床暖房や、引込戸のディテール、洗濯物シューターなど他にもいっぱい発見があったが、この家の空気感を感じることができたのが何よりも貴重な経験だったと思う。

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